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「何かの美味しいキッサ店」台本一部紹介 [舞台]

シアターまあ第三回公演「何かの美味しいキッサ店」は、1月の24日から、中野の「ザ・ポケット」で上演されます。

その稽古が行われているわけですが、いつもいつも言われることに、「どんな内容なのかわからないので不安」という声があります。そこで、今回は、特別に、台本を発表します。太っ腹なのか、無謀なのか。

これを読んで、どんな世界なのか、どんな登場人物が登場するのかを予想してください。

これを読んでも、まだまだ本番の舞台は楽しめますぞ。

上演台本 「何かの美味しいキッサ店」


   作 妹尾匡夫

   キャスト

○尾上(おのうえ)さくら~河本千明(26)
   キッサ憩のマスター春太郎の妹。商店街のブティックに勤めている。
○秋吉みゆき~上杉美浩(26)
   さくらの幼なじみ。近所の麻雀秋吉の娘。競馬などの博才は天下一品。色っぽい目線の持ち主。
○荒木健二~ 出口哲也(26)
   大学8年生。関西出身。真理子の甥。いい加減に大学に通っていたので8年生になってしまっている。
○川原奈々~ 四宮由佳(23)
   健二の大学の後輩。健二にあこがれているが、相手にされてないのが悔しい。スーパー竹下で経理の仕事をしている。
○松山高道~ 中村哲人(33)
   松山電器の若旦那。しょっちゅうキッサ憩で時間をつぶしている。週末にはいつも競馬をやっているが、全く当たらない。
○竹下昭夫~ 小磯勝弥(43)
   弱小スーパー竹下の社長。春太郎とは小学校の先輩後輩。新入社員の奈々に頭が上がらない。
○尾上真理子~丸山優子(43)
   キッサ憩のマスター~春太郎の妻。気っ風のいい性格。荒木健二の叔母。
○尾上春太郎~佐藤伸之(44)
   キッサ憩のマスター。コーヒーの入れ方だけは天下一品。店が繁盛しなくてもあまり気にしていない。




○第一場

   明かり入るとキッサ憩が浮かび上がる。木目を多様した全体的に茶色いイメージの昔ながらのキッサ店。
   正面向こうには入り口があり、その入り口の脇には大きな窓があり、ガラス越しにその向こうの通りを歩く人間が見える。
   窓の向こうは通りであるが、路地のようで、その向こうには塀がある。表通りには面していないキッサ店だ。
   店はカウンターと、テーブル席が二つ三つ。カウンターにはとまり木が三つぐらい。テーブル席の椅子はビニールレザーの古くさい椅子。
   テーブル席の脇には、マガジンラックがおかれていて、新聞や週刊誌が置かれている。
   カウンターではコーヒーしか入れず、店の奥に通じる出入り口がある。出入り口の向こうには簡単な厨房があるらしい。料理などは奥で作る。
   その出入り口には階段も併設してあり、自宅らしき二階に登れる。(階段は奥にあり、昇り降りの音が聞こえなくてもかまわない)
   それとは別に、トイレへの出入り口のドアがどこかにある。
   
   午前十時頃。
   春太郎、奥から登場してくる。
   店の電気をつけ、エプロンをかける。
   店の入り口の鍵を開け、ちょっと外に出て外に置かれているポスト(みえなくてもいい)から新聞を取り出してくる。通常新聞とスポーツ新聞の2紙。
   それをもってカウンターに戻り、そこで二つの新聞の背中をホッチキスでパチンパチンと二カ所ずつとめる。
   それを折り畳んで、マガジンラックに一紙を入れる。
   自分はカウンターでスポーツ新聞を広げて読み始める。

春太郎「さあ、我がベイスターズは今年はどうなんだ? 中畑はないと思うけどな」

   しばらく新聞を見つめていたが、急に、

春太郎「オレはDeNAとは絶対に呼ばんぞ!」

   春太郎、ページをめくって、

春太郎「稀勢の里なあ… 新大関で…(その頃の状況で)」

   奥の方で、笛吹ケトルの音がする。
   春太郎、奥に引っ込んで、ケトルをもってくる。
   昨日のコーヒーが入ったままのドリップを出し、ケトルのお湯をゆっくりと入れていく。その間も、半分は目がスポーツ紙に注がれている。
   コーヒーを落として、それをカップに入れ、飲みながらスポーツ紙を読む春太郎。
   そこに松山入ってくる。

松山 「おはよう。春太郎さん」
春太郎「おはよう。なんだ松山電器か」
松山 「なんだはないでしょう」
春太郎「また朝からさぼりか」
松山 「どうせ客こないもん。午前中に客が来たのは夏が最後。オレにも一杯頂戴」
春太郎「出涸らしだ」
松山 「いいいい」
春太郎「よくないよ。うちは生半可なコーヒーは客に出さない」
松山 「さすが春太郎さん、拘ってるねえ」
春太郎「ただ… お前なら別にいいか。客じゃないし」
松山 「ええ、オレ客じゃない?」
春太郎「客というのはね、きちんとお金払って飲む人ね。お前はずいぶんツケたまってるぞ」
松山 「きっついなあ」

   春太郎、残りのコーヒーをカップに注いで、松山に出しながら、

春太郎「飲み屋でツケってあるけどさ、キッサ店でツケってあんまりないぞ」
松山 「そこがこのキッサ憩のいいところなんですよ。いよっ! 商店街の人格者! 尾上春太郎!」
春太郎「オレが人格者ねえ… 営業とか回ったら? 駅の向こうにマンションできただろ」
松山 「ま、そうなんだけどね」
春太郎「なんだっけ、パラボラアンテナとか? 売れるんじゃない?」
松山 「スカパーね? それがさ、聞いたらあそこ、マンション全体でケーブル入ってるんだって。出る幕無し。あきらめちゃった」
春太郎「商売っ気ないなあ、松山電器危ないんじゃない?」
松山 「ホントホント」
春太郎「よくつぶれないよ」
松山 「ね」
春太郎「呑気だなぁ。ひとごとかよ」
松山 「うちより、キッサ憩は大丈夫なの?」
春太郎「オレの代まではなんとかな。でも、オレの代で多分終わりだ。継いでくれる子供もいないし」
松山 「ねえ、キッサ憩はモーニングとかやらないの?」
春太郎「オレ、モーニングって嫌いなんだ」
松山 「どうして?」
春太郎「あのな。個人のキッサ店がモーニングって、なぜやるか知ってるか?」
松山 「知らない。なんで?」
春太郎「夕べの出涸らしでもうひと商売できるからなんだよ」
松山 「ああそうなんだ」
春太郎「オレは出涸らしでひと商売なんて、ごめんだ」
松山 「(コーヒーちょっと飲んで)うまっ。十分うまいじゃん」
春太郎「やっぱお前は客じゃないわ。それがうまいなんて言ってるようじゃ」
松山 「そうかなあ」
春太郎「嫁もなかなかこないはずだ」
松山 「関係ないでしょう」
春太郎「本物を見抜く目がないんだ。うん」
松山 「えーっ?」
春太郎「というか、本人が本物になってない」
松山 「きっついなあ。新聞いい? 競馬ンとこだけ」
春太郎「ああ、もう綴じちゃった」
松山 「ちぇっ」
春太郎「どうせ負けるんだ。やめとけ競馬なんか」
松山 「でも当たるときもあるかもしれないじゃん」
春太郎「どうせなら、みゆきちゃんに予想してもらえ」
松山 「みゆきちゃんて、向かいの雀荘秋吉の?」
春太郎「そう。看板娘。あの子の博才は大変なもんだぞ」

   そこに真理子入ってくる。

松山 「あ、真理子さん」
真理子「おっ。松山電器」
松山 「おはようございます」
真理子「お前は働け。そしてツケを払え」
松山 「あいかわらず直球だなあ、真理子さんは」
真理子「うちは慈善事業でお前にコーヒー飲ませてるんじゃないぞ」
松山 「ま、これはほら、夕べの出涸らしらしいから」
真理子「お前からは、出涸らしでも通常料金を取る。ツケとくからな」
松山 「そんなあ」

   そこにさくらが降りてくる。

さくら「おはよ」
春太郎「おはよう」
真理子「おはよ」
松山 「おはよう」
さくら「あ、松山電器」
松山 「みんなそう呼ぶのね」
さくら「働いたら?」
松山 「それも言うのね」
さくら「お兄ちゃん。あたしにも一杯もらえる?」

   春太郎、出涸らしにケトルでコーヒーを足しながら。

春太郎「なんだ、徹夜か」
さくら「まあね」
真理子「なに、さくらちゃん徹夜したの?」
さくら「うん」
真理子「あ、言ってた例の?」
春太郎「なんだ、例のって」
さくら「カーネーションってやってんじゃん」
春太郎「カーネーション?」
松山 「朝ドラでしょ? うちのテレビで毎日映ってるよ」
真理子「ホントに電気屋か? 日本中のテレビで映ってるんだよ」
春太郎「カーネーションがどうした」
さくら「あれでさ、型紙で生地だけ切って、あとは縫えばいいだけ、簡単に洋服ができるって商品が飛ぶように売れる場面があってさ」
春太郎「なんなんだ、それ」
真理子「つまり、キットってやつよ。途中まで出来上がってて、あと縫うのは自分でやる。ミシンで。半分手作り気分」
さくら「店長があれをまねしてやってみたら、結構人気になってさ。お客さんの注文も一杯来て。おかげであたしは夜通しチョキチョキ」
春太郎「そんなものが売れるのか」
さくら「ね」
松山 「ねえ! キッサ憩でもそういうのやれば?」
真理子「そういうの?」
松山 「コーヒーがもう挽いてあってさ、一杯ずつ小分けにしてあってさ、お湯を注げば一杯できあがりってヤツ」

   冷たい目でみんなが見るので、

松山 「…とか」
さくら「もうあるよ」
松山 「あ、あるの」
真理子「働け。そして世間を知れ。そして幾分か恥を知れ」

   そこに入ってくるみゆき。

みゆき「おはようございます」
春太郎「あ、みゆきちゃん。おはよう」
みゆき「春太郎さん、コーヒー4つ作って。店にもってくから」
春太郎「ほいよ。おい松山電器。競馬ならっとけ」
松山 「ええ? (みゆきに)お、はよう」
みゆき「ああ松山電器」
松山 「はい」
みゆき「働かないの?」
松山 「働きます」
さくら「おはようみゆき」
みゆき「おはようさくら。なんか眠そう」
さくら「徹夜」
みゆき「さくらも? あたしも」
真理子「なに、みゆきちゃんも徹夜?」
みゆき「徹夜麻雀」
春太郎「徹夜麻雀。今どきめずらしいな」
みゆき「うちは結構あるんだよ。途中からメンバー足らなくてあたしが相手してたの」
真理子「結果は?」

   みゆき、Vサイン。

みゆき「ねこそぎ、巻き上げてやりましたよ。サラリーマンの小遣い」
春太郎「やっぱり、みゆきちゃんの博才はすごいな」
みゆき「まあ、麻雀はそんなでもないんだけど。勝つコツがあるんです」
さくら「勝つコツ?」
みゆき「そう。こっちがリーチしてるときに、相手が捨て牌悩んでたりするでしょ? その時すかさず、流し目で相手の目をみてやるわけ。すると、相手はポーッとしちゃって、捨てちゃいけない牌を捨てちゃうの。で、ロン!」
さくら「あんたまだそんなことしてるの? この子高校のときに編み出したんだよね、あの目」
春太郎「へえ、どんな目? オレにしてみて」

   みゆき、春太郎に目線を送る。

春太郎「なるほど。これはすごいわ。色っぽい」
みゆき「しかもね、この方法で勝つと、相手はニコニコしながら負け分を払ってくれるんです」
松山 「でも、オレはサ。なんかそういうの卑怯だと思うな」
春太郎「みゆきちゃん。(ポーズで松山電器にも)」

   みゆき、松山に目線を送る。

松山 「ボク、なんでも捨てちゃう」
真理子「働け」
春太郎「みゆきちゃん。コーヒーできたよ」
みゆき「ありがとう。お金は空いたカップと一緒に持ってくる」
春太郎「ん」

   みゆき、お盆でコーヒーを持っていこうとする。その時、入り口から健二が元気に入ってくる。

健二 「マイド! おはようさん! (松山に気づいて)おお、マッチャマ電器。働いてるか?」
松山 「働こうと思ってる」

   すれ違い様に、みゆき、健二にも目線を送る。

健二 「(たじたじとしながら)…なんぼ払ろたらええのん?」
みゆき「また、今度」

   にっこり笑って出て行くみゆき。

健二 「知らんかった。みゆきちゃん、オレに惚れてんねや?」
真理子「惚れてないわ!」
健二 「けど、あの目ぇは、只事やないでおばさん。(さくらに)なぁ、惚れてるなぁ?」
さくら「残念ながら、惚れてない」
真理子「健二。あんた、大学は?」
健二 「そら行くわ。行くけど、その前にモーニングコーヒーもらおかと思て」
真理子「なにがモーニングコーヒーだよ。そういうことできるのは、社会人になって、きちんと働いてるヤツが言うこと。ね」
松山 「そうそう。健二君、働いた方がいいよ。働かないと辛いこと多いよ?」
真理子「大学生の本文はなんだか、あんた分かってる?」
健二 「わかってるがな、真理子おばさん。オレ、何年大学通ってると思ってンねん」
真理子「8年だろ。通いすぎなんだよ! 容子姉ちゃんも愚痴ってたよ。『あいつ、しばいたろかと毎年思う』って。『あのアホ、医学部気取りか』って」
健二 「なに、おばさんお袋に電話したん?」
真理子「かかってくるんだよ! あんたの母ちゃん、声でかいんだよ! 耳痛いんだよ!」
健二 「おばさんも、たいがい、声でかい」
春太郎「寝言もでかいんだよ」
真理子「そんなことないでしょう」
春太郎「寝てるからわからないんだよ」
真理子「あんたも寝てるでしょう?」
春太郎「毎回、飛び起きる」
さくら「しかも、すごくはっきり寝言いうのよね」
健二 「聞こえんの?」
さくら「隣の部屋でもはっきり聞こえる。夕べも言ってた」
春太郎「ああ、あれは久しぶりにギョッとした」
松山 「なんて言ってたの?」
さくら「確かね、『チキンラーメンは二分半がうまいんだよ!』って言ってた」
春太郎「文脈がわからなかったなあ」
真理子「そんなことどうでもいいの。健二、あんたは早く大学に…」
健二 「あ、オレちょっと便所」

   健二、トイレに消える。
   そこに飛び込んでくる竹下。何かから逃げているらしい。

竹下 「ゴメン、春先輩。ちょっと匿って」
春太郎「なんだ? どうしたタケ」
竹下 「追われてるんだ」
春太郎「誰に」
竹下 「奈々ちゃん」
春太郎「奈々ちゃんて、川原奈々?」
竹下 「そう」
春太郎「奈々ちゃんは、お前んところの経理だろう」
竹下 「そう」
春太郎「経営者がなんで逃げる」
竹下 「そうね」
真理子「なんだ、スーパー竹下でなんかやらかしたのか」
竹下 「まあ、そうなんだけど」
真理子「なにやった」
松山 「なにやったの、昭夫さん」
竹下 「おお、松山電器、いたのか」
松山 「いるよ」
竹下 「働け」
松山 「わかってるよ」
竹下 「あ、そうだ。健二君いない? 健二君」
真理子「健二は今、トイレ入ってる」
竹下 「ええ? そうなの?」
真理子「なに、健二にも用なの?」
竹下 「うん。奈々ちゃんは健二君にほれてるからさ、いなしてもらおうと思ったんだけど」

   そこに川原奈々が登場。キッサ店の前。

竹下 「やべ」

   カウンターの陰に隠れる竹下。
   奈々、ガラス越しに店内を覗く。が、竹下がいないことを確認して、通りすぎる。
   さくらが入り口に駆けて行って、扉を開けて奈々を呼ぶ。

さくら「奈々ちゃん! 奈々ちゃーん! 社長、ここ」
竹下 「ええっ! なんで!」

   奈々戻ってくる。

奈々 「社長!」

   カウンターの陰に隠れて震えている竹下。

奈々 「社長! 隠れてないで出てきなさい!」

   出ない竹下。

奈々 「カウンターの陰! わかってるのよ!」
竹下 「なんでわかるの?」
奈々 「さくらさんが指さしてるから」

   渋々出る竹下。

竹下 「さくらちゃん、どうしてだよ」
さくら「だって、面白いじゃん」

   そこにみゆきも戻ってくる。

みゆき「なんか面白そうな怒鳴り声が聞こえたんだけど」
さくら「あんた、耳いいね。その通りよ」

   様子をみて、みゆき。

みゆき「なんだか、修羅場が始まる予感」
さくら「多分ね」
奈々 「社長! ちょっとここに座ってください」
竹下 「はい」

   テーブル席に竹下を座らせる奈々。

春太郎「奈々ちゃん、何があったの」
奈々 「ちょうどいいです。みんながいるところで聞いてもらいましょう。ねっ! 社長!」
竹下 「はい」

…(続く)

今年の番組を振り返って [ラジオ]

今日、江藤愛キラ☆キラのペラペラコーナーで宇多丸君も言及してたけど、今年の僕の担当しているラジオ番組を振り返って、最も忘れがたい番組は「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」でした。

放送日、3月12日。震災の次の日。
番組を決行するのか、変更するのか。議論がかわされましたが、誰言うともなく「これは、やろう」ということになりました。

で、内容です。
通常のシネマハスラーや、サタデーナイトラボなどは飛ばすとして、では何をやるのか。

大まかな構成はみんなで考えました。
基本、「曲」をかけよう。曲が足らない。今、日本に曲が足らない。曲なんて不謹慎だと思ってるムードが漂ってる。でも、曲をかけよう。

となりました。

そして、「メール」を読もう。みんなの「今」を読もう。どんどんと読もう。

となりました。

加えて「情報」を伝えよう。今の情報を伝えよう。

となりました。

「曲」と「メール」と「情報」

この三本立てで行くぞと。


で、僕は一つだけ譲りたくない部分がありました。

それは、「まず、曲をかける」ということでした。

番組が始まったら、番組タイトルコールよりも前に、曲をかけるべきだ。

それも、ライムスターの「そしてまた歌いだす」をかけるべきだ、と提案しました。

「いきなり曲からですか?」


という声も上がったんですが、ここは譲るつもりはありませんでした。

「まず、自分が今、何を考えているのかを宣言して、テーマ曲よりも前に、『そしてまた歌いだす』をかけねばならぬ」

と主張してゆずりませんでした。

「この曲は、これから3時間、生放送をやっていく上での決意宣言なんです」
と言い張ってゆずりませんでした。

結果、その通りになりました。

曲がかかって、自分はそういう感情に揺さぶられるのだろうと思っていたのですが、それ以上に揺さぶられ、
自分が提案したにも関わらず、号泣しておりました。


「番組タイトルコールよりも先に、この曲をかけることができて、よかった。というよりもそれが必然だったんだ」

と思えた一瞬でした。


今年の番組を振り返って、最も思い出深き、そして最も大切な一瞬が、そこにあったのです。

ラジオドラマの話を書きます [ドラマ]

今日、「オール讀物」の1月号が発売になり、角田光代さんの「それもまたちいさな光」が一挙掲載で発表になりました。TBSラジオ60周年記念ラジオドラマの原作です。

すでにドラマは完成して、オンエアの時を待っているわけですが、今回脚色と脚本を担当したものとして、いろいろと書いてみようかと思います。

まず、今回の脚色・脚本化の話をもらったのは、今年の10月の頭ぐらいだったと思います。プロデューサーの三条氏から声をかけられ、一枚の企画書を渡されました。そこに、このラジオドラマの企画が書いてありました。
作品は原作があり、角田光代さんの、それも書き下ろしの作品になると。
「3人の女性のそれぞれの恋愛と、それに絡む1人の男。そこにはいつも、とあるラジオ番組が寄り添っていた」
というような、あらすじだけが書いてある企画書で、原作そのものはまだ完成していませんでした。

発注を受けた時には、ちょっと迷いました。というのも、その1カ月前にSETの急遽公演の作・演出を頼まれていて、そろそろ台本作りに向かわなければと思っていた矢先だったからです。
しかも、来年の1月には自分のシアターまあの舞台も待っている。台本作りもまだだし、そもそもチラシは待ってくれない。急いで作らなければならない。そんな状態だったから。

ちょっと迷ったものの、引き受けることにしました。口幅ったい言い方になりますが、「これはオレ以外には書けないな」と思ったからです。「ラジオのことをよく知っている」「ドラマも書ける」「キャラクターにぴったりの役者もたくさん知っている」というような理由で。
「これはオレしかできない。しかも、今どきほとんどなくなったラジオドラマの、それもTBSラジオの60周年というような、ビッグプロジェクトに誘っていただいて、光栄なこともある」
てなことを考えて、「やります」と答えました。

ただ、一つだけ心配なことがありました。というのは、ボクはかつて原作ありの作品を脚色する仕事を引き受けたんですが、これができない。
書いた人の思いを思ってしまうと、カットができない。変更ができない。どうしても手が出せない。
結局、あきらめてしまったことがあったからです。

でも、結局は引き受けた。

時間的には、11月のSETの台本を仕上げるのが順番でしたが、もたもたしていると、どちらの企画も中途半端になる。まずはラジオドラマの台本に集中して書き上げてしまおうと、計画しました。
そして、角田さんの原作のゲラが上がってきました。
みてびっくりしました。今回のオール讀物の表紙にあるように、「感動の三百枚」という中編。

みなさんはピンと来ないかもしれませんが、三百枚というのは四百字詰め原稿用紙三百枚ということです。
放送の業界では、四百字の原稿用紙は一枚で一分見当になります。ってことはこのままだと三百分。つまり5時間のラジオドラマになってしまう。

ラジオの企画は二時間ドラマでした。(最初は二時間ドラマだったんです)

大幅に削らないといけない。

さあ大変です。カットが苦手な人間が、半分以下にカットしないといけない。もう覚悟を決めました。ズバズバ行くしかない。
そしてセリフ。これも大幅に変更しないといけないということがすぐにわかりました。
角田さんは小説家ですから、読むセリフはとっても上手です。でも、耳で聞くセリフにはなってない。原作を読んで、まずそれを思いました。そして、「失礼ながら、耳で聞くセリフを書くのは、オレの方が上だ」と信じて、どんどんと書き換えていきました。

そしてドラマを進めていく、地の部分。原作では、客観目線で地の部分が書かれていました。
たとえば、原作では「仁絵はその時、××と思っていた」という書き方。
でも、ラジオドラマではそれはとっても話が遠くなってしまうんです。

ラジオというメディアは、登場人物が直接リスナーに語りかけなければホントウが伝わりません。

そこで、地の部分(ラジオではナレーション部分)はすべて、主役と準主役(悠木仁絵と竜胆美帆子)のナレーションという形に書き換えました。(その結果、石田さんのセリフは膨大に。愛ちゃんのセリフも大量になる結果になりましたが)

原作を読みながら、ラジオドラマを聞いていただくと、どんなふうにセリフや地の部分が変わっているかが分かって面白いかと思います。

で、キャスト。
主役の石田ひかりさんは、番組の顔ですから、プロデューサーが選び、是非にと口説きに行ったんですが、その他の主要キャストは、ほとんど僕の提案が採用されました。
「この役は、あの役者がぴったりだ」と僕が思うキャストが決まっていきました。

その中でも、僕が収録に立ち会っていて、圧巻だったと思うのは、ラジオパーソナリティー役(つまり、物語のもう一人の主人公)竜胆美帆子(りんどう・みほこ)役の笹峯愛ちゃんでした。

原作を読んで、僕の頭の中にはすぐに笹峯愛ちゃんの名前が浮かびました。
笹峯愛ちゃんといえば、15年前にはアイドルをやっていて、王様のブランチのレポーターをやっている人ということで知っている人もいるかもしれません。

でも、最近は自分で台本も書けるし、演出もできるし、芝居もうまい。僕はそれを確認して信頼もしている。
「これは、愛ちゃん以外には考えられないな」と思いました。
(愛ちゃんは昔からの知り合い。最近もお互いの舞台を見に行き合っている仲)

「ラジオ番組を長年やっている人で、芝居もとっても上手な人」
と考えると、愛ちゃんがうってつけだと思ったからです。

早速会議で提案し、採用されました。

問題は、ちょうど収録時期に自分の演劇ユニット「and Me」の新作の舞台の本番が重なっていたからなんですが、今回は愛ちゃんは作・演出のみで、出演はしてないのが救いでした。

愛ちゃんに電話をすると、快諾をいただき、出てもらうことになりました。

で、今回の収録です。

みなさん、今回の圧巻は2日目の放送の愛ちゃんの一人語りのシーンです。
もちろん、石田ひかりさん、河相我聞さんたちの芝居もすばらしかったんですが、今回の圧巻は愛ちゃんの2日目の一人語りのシーンです。自分のこれからのこと、伴侶とのこと、番組のことを自分語りに語るナレーション。
約、6~7分、あったでしょうか。もっとかな。

この時の収録はすごかった。愛ちゃん、全く嚙まないんです。本番で嚙んで、しゃべり直したところが一切ない。
サブで愛ちゃんの一人語りを聞いているスタッフたちも、水を打ったように静かに愛ちゃんの声を聞いていました。
そして圧巻の一人語りが終わった瞬間、誰言うともなく、「すごい…」「うまいなあ…」と声が上がっていました。

今回のドラマの、僕は、一番の聞きどころだったと思っています。

愛ちゃんは、「ここの部分は何度読んでも泣いてしまっていた」と語っていましたが、その思い入れが、芝居に乗り移ったような感じでした。

楽しみにしててください。


さて、そのドラマですが、TBSラジオで、12月23日(金)の夜6時から7時半。12月24日(土)の夜6時から7時。
二日間に渡って放送されます。


今どき、これだけのラジオドラマは滅多に聞けないと思います。

是非、お聞きになって、感想を聞かせてください。

僕のツイッターでも、このブログのコメントでも、なんでもかまいません。


それでは、明後日の夜を、僕も楽しみに待つことにします。

以下は、ラジオドラマのホームページのアドレスです。

http://www.tbsradio.jp/hikari/index.html

Corichに登録しました [舞台]

演劇情報サイト、Corichに「何かの美味しいキッサ店」の情報をアップしました。

http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=32981

ここの「観たい!」に投稿してくださると、うれしいなあ…

観たい思っている場合だけで、大丈夫だけど。

ラジオドラマのお知らせです [ドラマ]

前回のブログに書いた、TBSラジオのラジオドラマの情報をお知らせします。

今回は、僕の書き下ろしではありません。原作があります。しかも、ただの原作ではありません。
人気作家 角田光代さんの原作です。まだ発表されていない新作で、タイトルが、
「それもまたちいさな光」という作品です。
http://www.tbs.co.jp/radio/radiotokyo/60sp/

放送時間は今月の23日と24日のどちらも午後6時〜7時に放送されます。金曜と土曜ですね。トータル2時間ドラマとなります。TBSラジオ60周年記念特番です。かなり大きなプロジェクトとなります。
(追記~今ホームページを見たところ、金曜日は午後6時~7時半の90分枠に枠拡大したみたいです。収録時にちょっと長いと思っていたんですが、枠拡大をしてしまうとは、すごい!)

物語は、イラストレーターの事務所に勤める悠木仁絵という主人公を中心に、3人の女性と1人男性のさまざまな恋愛の物語です。

その恋愛に、架空のラジオ番組が絡み、物語は進んで行きます。

主役の悠木仁絵役には、石田ひかり。相手役の雄大に河相我聞。
ラジオパーソナリティー役に、笹峯愛。ラジオスタッフに林和義、古川悦史、石毛友子。
その他の出演者は、SETの丸山優子、松村真知子、河本千明、南波有沙、野添義弘、坂田鉄平。
久ヶ沢徹、菅川裕子。などの豪華な出演者で、本格的なラジオドラマをお送りします。(敬称略)

最近では、これだけの本格的なラジオドラマを放送するのはホントウに珍しいので、みなさん楽しみにしておいてください。

また、放送日近辺に発売される、オール讀物に、角田さんの原作が掲載され、発表となります。

このラジオドラマの、脚色・脚本化を、僕が担当しました。

現在、収録が始まっています。

仕上がりがとっても楽しみです。

もろもろお知らせです [舞台]

更新をさぼってました。ごめんなさい。
もろもろ報告があります。

まずは、11月25日~27日に、劇団スーパーエキセントリックシアターの番外公演「あちらをたてれば、こちらがたたず」が、無事終了しました。
2カ月前に、社長の八木橋さんに「頼む」と言われて引き受けた、作・演出。とにかく時間がなくて、どうしようかと思った時期もありましたが、フタを開けてみると、ご覧いただいた方々に大好評の舞台となりました。
舞台は、一部が世田谷ベンチャーズのライブ、ダンスパフォーマンス、タイツマンズの3本立て。二部が僕の作・演出の「あちらをたてれば、こちらがたたず」の芝居という、幕の内弁当のような豪華な舞台でした。
この形が好評で、「毎年この形をやったらいいんじゃないの」という声もいただきました。
まずは、ともかく、無事に終わってホッとしています。
ありがとうございました。

とはいいながら、ホッとはしていられない。またもや2カ月後に、シアターまあの第三弾舞台「何かの美味しいキッサ店」が上演されるのです。準備が決定的に遅れています。まずは、台本を完成させないと。

チラシはこちら。今回もイラストはあいかわらず翔さん。デザインは出演者でもある上杉美浩がやってくれました。

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チケット販売しています。

「何かの美味しいキッサ店」
劇場「ザ・ポケット」 (中野駅より徒歩5分)
ポケットスクエア 03-3381-8422
ザ・ポケットロビー03-3382-1560(公演期間中のみ)

2012年1月24日(火) 19時
      1月25日(水) 19時
      1月26日(木) 14時と19時
      1月27日(金) 19時
      1月28日(土) 14時と18時
      1月29日(日) 14時

料金
 全席指定
 前売り 3800円
 当日  4000円
 前売りペアチケット 7000円
 (前売りペアチケットは、まあメールのみでのお取り扱いになります)
●ローソンチケット
Lコード予約(24時間対応)※Lコード:37022
0570-064-003 (関東・甲信越)
オペレーター予約(10時~20時)
0570-000-777 (お問い合わせ)
0570-000-407 (演劇・クラシック専用)
インターネット予約
http://l-tike.com
 (パソコン・携帯共有)
店頭販売
 ローソン店内Loopiにて直接購入可能

●カンフェティ
 http://confetti-web.com/ticket/ticket.asp?G=of00re06&S=120124

●まあメール
 info@theater-ma.com

お問い合わせ
 オフィス・REN 03-5829-8031(平日12時~18時)


といった情報です。
小屋が前よりもグンと大きくなって、全席指定席にもなって、大勢がきてくださるかとても心配です。
それよりも、台本が間に合うのか、心配です。



そして情報がもう一つ。
まだ、詳しくは言えませんが、ラジオドラマを書きました。
有名な女性小説家の方の原作があり、それを脚色してラジオドラマにしました。
12月23日 午後6時~7時
12月24日 午後6時~7時
TBSラジオで、放送されます。

詳しく情報が決まったら、また報告します。


まずは、報告ばかりで、申し訳ありませんでした。

シアターまあ クチコミ隊の募集です [舞台]

ご無沙汰しております。

シアターまあの妹尾です。

次回、シアターまあは1月の最後に公演を打ちますが、それを見据えて、シアターまあをもっと大勢の方に知っていただきたいということで、「シアターまあクチコミ隊」というものを募集したいと思います。


目的は「シアターまあをなるべく大勢の方々に知っていただきたい」ということです。

で、

今回、シアターまあ普及の作戦として、
前回公演「ホントウの間柄」の記録用DVDを希望の方に配布しようかと思っています。

なるべく大勢のお知り合いやお友達に、回覧して閲覧していただき、シアターまあの舞台を知ってもらいたいというのが、理由です。

配布するDVDは無料です。 返却の必要もありません。 公演にいらっしゃっていない方にもお送りいたします。 「どんなものか、見てみたいな」とお思いの方でも大丈夫。

遠慮せずに申し込んでください。

「シアターまあクチコミ隊になってやってもいいよ」という方は、以下のアドレスに
配布先のご住所、お名前を記入の上、申し込みください。(電話番号は特に必要ありません)

随時、郵送していこうと思っています。

メールアドレスは、シアターまあ

info@theater-ma.com

です。

たくさんの申し込みを待っています。

シアターまあにご協力ください。

配布するDVDは、この作品です。

ちらし表.jpg

ちらし裏.jpg

「ホントウの間柄」終演しました。 [舞台]

シアターまあ第二回公演
「ホントウの間柄」
全公演、無事終了しました。
ご来場いただいたみなさん。本当にありがとうございました。

連日満員とは行かなかったけど、終演後に販売した台本が予想以上に飛ぶように売れまして、見ていただいた方には気に入っていただけたんだと思いました。
台本は、買いそびれて、欲しいとお思いの方がいらっしゃれば、このブログや、シアターまあのメアド
info@theater-ma.com
に連絡くだされば、考えます。

しかしながら、次回はもっといろいろと考えて、動員数を延ばさないと、シアターまあ、もたんぞ…。

いろいろと作戦を考えます。

舞台写真をいくつか。

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最後は、出演者で記念写真。

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まるで、どこかの民宿に夏合宿に来たような集団に見えます。

「ホントウの間柄」今日でラストです [舞台]

シアターまあ第二弾公演「ホントウの間柄」いよいよ、今日月曜日で千秋楽です。

今回の舞台は僕にとって挑戦でした。
「性同一性障害」という重いテーマを、どうやってコメディーに結びつけるのか。できるのか。挑戦でした。

ある程度は、出来たと思います。

たとえ、性同一性障害の方がごらんになったとしても、失礼のない内容になっていたと自負しております。

何よりも、終演後に販売した今回の上演台本が、飛ぶように売れたのがうれしい誤算でした。
毎日、制作から「もう台本が底をつきます」という知らせをうけて、集合前や終演後に事務所に通って、台本を印刷する日々が続きました。
レーザープリンターでも、一冊印刷するのに10分ぐらいかかるんです。それを20冊も30冊も印刷するもんですから、3~4時間かかるんです。結構重労働でした。

でも、ストーリーを見終わったあとに、もう一度ストーリーを追いたいと思ってくださるということは、ストーリーを気に入っていただけた証拠だと思っております。

こんなに売れるなら、シアターまあのホームページで、通販でもしようかなと思ったりして。

通販やったら、みなさん買ってくださいますかね?


ともかく、あと一日がんばります。

このブログを読んでくださって、見たいと思ってくださった方、まだギリギリまで間に合います。チケットはまだあります。

以下のメアドにメールを送ってください。見てください。

info@theater-ma.com

よろしく。

「ホントウの間柄」舞台セット紹介 [舞台]

今回の舞台で、一番評判の高い、セットをご紹介します。

とってもリアルで、とってもあったかい。
「こんなところで住みたい」という声も沢山もらいました。

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「ホントウノ間柄」8月8日までです。まだまだ入れますよ!

あ、また三角絞めくんが、ブログで感想を書いてくれました。

http://ameblo.jp/kamiyamaz/entry-10974986375.html


いつもありがとう。

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