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シアターまあ「何かの美味しいキッサ店」台本公開~続き [舞台]

(第一場~続き)

奈々 「私がスーパー竹下に経理としてお世話になり始めて、ちょうど十カ月になります」
竹下 「なります」
奈々 「その間、近くにコンビニが出来たり、駅の向こうに大きいスーパーも出来たり。スーパー竹下は何度もピンチを迎えました」
竹下 「ました」
奈々 「その都度、私が必死に経理をやり繰りして、そのピンチを乗り越えてきました」
竹下 「ました」
奈々 「語尾ばかり繰り返さない!」
竹下 「はい」
春太郎「(松山に)これ、社長と新入社員の会話だよな」
松山 「の、はずです」
奈々 「毎日、あれほど言ってるじゃないですか。注文書は、指さし確認! それも、複数回!」
竹下 「はい」
奈々 「私は毎回やってます!」
竹下 「はい」
奈々 「だからミスがなーい!」
竹下 「はい」
奈々 「昨日は、たまたま、たまたま、忙しくて社長に任せた!」
竹下 「はい」
奈々 「任せた私も悪いけど、社長! あんたはもっとワルイ!」
竹下 「はい」
春太郎「なんだ、注文ミスか」
奈々 「ありえませんよ! いいですか! あり、え、ませんよ!」
真理子「そんなに?」
奈々 「ほうれん草の注文は、3箱! それでも多いぐらいです!」
松山 「何箱注文したの?」

   奈々、松山に持っている注文伝票を差し出す。
   松山、見て、

松山 「三十箱だ」
全員 「わぁ…」
奈々 「今、三十箱届きました! 店の前に積み上げてあります! お客さんが通れなくなってます!」
竹下 「はい」
奈々 「私、配送のお兄ちゃんに、『なんかの間違いじゃないですか?』っていいました!」
竹下 「はい」
奈々 「確かに、間違ってました!」
竹下 「!」
奈々 「こっちがね!」
竹下 「はい」
奈々 「私、あの配送のお兄ちゃん、前からいいなあと思ってたんです! ちょっと恋してたんです!」
竹下 「え、そうなの?」
奈々 「どうしてそこだけ『はい』って言わない!」
竹下 「はい」
奈々 「拝みました! ペコペコと、引き取ってくれませんかって、持ってってくれませんかって! 何度も何度も、ちょっと恋してる男に頭下げました!」
竹下 「どうなったの?」
奈々 「断られました! 『オレ、配達してるだけだから』って言われました!」
竹下 「はい」
奈々 「私の淡い恋も、多分終わりです!」
竹下 「ごめんなさい」
奈々 「謝られると、確実に終わったんだって気がする!」
竹下 「はい」
奈々 「どうするんですか、ほうれん草ばかり、三十箱も。一箱に30束も入ってるんですよ! 合計で900束ですよ! ほうれん草ばかり、900束!」
竹下 「ポパイじゃないんだもんね」
奈々 「どういう意味だ! 意味がわからない!」
竹下 「昔ほうれん草を食べると強くなる、ポパイって漫画があってさ」
奈々 「そんな漫画知らなーい!」
春太郎「ポパイしらない世代か。さくらは?」
さくら「しらない。しってる?」
みゆき「しらない」
春太郎「松山電器は?」
松山 「オレはさすがに…」
奈々 「漫画の話はいったん横においておく! 社長、指さし確認しましたか!」
竹下 「…したと思う」
奈々 「どの指で!」

   竹下、思い出そうとする。

奈々 「ほら思い出せない!」
竹下 「はい」
奈々 「しかも! 人指し指以外で指さし確認する人を、私は知らない!」
竹下 「…指さし確認… したと思うんだけどなあ…」
奈々 「ここまでお聞きのみなさんは! 指さし確認したと思いますか!」

   奈々、順番に指を差して聞いていく。
   指を差された順に、

松山 「してないと思います」
さくら「してないよね」
みゆき「してないに一票」
真理子「してるわけないじゃん」
春太郎「まあ、してないな」
奈々 「満場一致だ!」

   そこに出てくる健二。

奈々 「今出てきたキミは!」

   と奈々、タイミングで指を差す。の次の瞬間、健二であることに気がつく。フリーズする奈々。

奈々 「健二先輩…」
健二 「なんや、奈々ちゃんやんか。なに? オレなんかした?」
奈々 「…してません…」
健二 「さっきから大声で怒鳴ってたん、あれ奈々ちゃんかいや」
奈々 「そんなに大きな声でした?」
健二 「出そうになってたババが引っ込んだわ。大きな声やなあ。奈々ちゃん、そんな声出んねんなあ。印象変わったわ」
奈々 「…恥ずかしい…」
竹下 「健二君」
健二 「なんです?」
竹下 「助けて」
奈々 「あっ…」
健二 「オレが? 助ける? 誰を? 誰から?」
竹下 「オレを、奈々ちゃんから」
奈々 「このぉ、卑怯者がぁ…」

   健二、周りを見回す。周りの人間の何人かと目が合う。目が合った人は、健二に『どうぞ、お願いします』とポーズ&目配せ。健二『オレに、やれと?』のポーズ。
   健二、急に気取りながら、

健二 「なんやなんや。こんだけ大勢集まって、揉め事の仲裁もでけへんのかいや。まあ、オレほどの好男子が口きかな、まとまるもんもまとまらへんてか。どないしたん、奈々ちゃん」
奈々 「社長が、注文伝票を間違えたんです」
健二 「なんや、そんなことかいや」
奈々 「そんなことって! ウチみたいな小さなスーパーでは死活問題なんです。損金を埋めるの、大変なんです」
健二 「商売ちゅーもんは、損して得とれ。ちょっとぐらいの損は、いずれ倍になって戻ってくるもんやで」
奈々 「結構大金なんです」
健二 「奈々ちゃん、金は天下のまわりものなんやで、多少の金はどっかから回ってくるもんやて」
奈々 「そうですか?」
健二 「せや。どっかの誰かが、ポーンとポケットマネーで損かぶってくれたり、するかもしれへんやろ」
さくら「じゃあ、健ちゃんが代わりに損かぶったら?」
健二 「それはまあ、でけへんけども」
真理子「じゃあ、ほうれん草食べてあげな」
健二 「ほうれん草! そんなもん、なんぼでも食うたるがな。なんぼほど食うたらええねん」
奈々 「900束」
健二 「死ぬわ」

   健二、奈々の手をとりながら、

健二 「オレはなあ、奈々ちゃん」
奈々 「(手を握られて超緊張)はい」
健二 「スーパー竹下は、奈々ちゃんで持ってるの、知ってんねんで。このか細い手ぇで、電卓打って、店支えてんの知ってんねんで」
奈々 「ありがとうございます」
健二 「うちの大学に、後輩として入ってきて、何年かしたら同級生になり、そして、先輩として先に卒業した奈々ちゃん」
真理子「それがダメだっつーんだよ」

   健二、奈々の頭をなでながら、

健二 「同じ大学出身者として、奈々ちゃんには期待してんねんで」
真理子「出身者ってのは、卒業した人なんだよ」
健二 「よう頑張ってるよう頑張ってる。奈々ちゃんも、困ってるやろうけど、ここはオレに免じて、社長のこと、許したってくれへんか?」

   奈々、悔しいが…

奈々 「…わ、わかりました」
竹下 「助かったぁ」
奈々 「でも社長! 今回大目にみるのはね」
竹下 「はい」
奈々 「一日に二つも、恋をつぶされたらタマラナイからです!」
竹下 「わかってます」
健二 「ほな、店もどり」
奈々 「はい」

   奈々と竹下、出て行こうとする。

健二 「奈々ちゃん」
奈々 「はい?」
健二 「ほうれん草、困ってンのやったら、持って来ぃ。買おたるで」
奈々 「ホントですか!」
健二 「一束でええか?」
みゆき「せこ」
さくら「せこ」
奈々 「…はい」
春太郎「奈々ちゃん。うちにも持ってきな。十束ほど仕入れるよ」
奈々 「ありがとうございます」

   出て行く奈々と竹下。それを見送って、

健二 「色男はつらいのぉ」
真理子「早く大学、行けっつの」
松山 「ホントだよ」
真理子「あんたは働け」

   暗転。(第一場終了~第二場へ)


さあ、このあとどこの台本を公開してしまおうかなあ。


台本を読んだら読んだで、どんな風に演じられてるのがが楽しみになるのが、シアターまあだと自負しております。


みなさん、チケットはお早めにね!





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イ・とうしろう

奈々「・・・迎えました」 竹下「迎えました」
奈々「・・乗り越えてきました」 竹下「乗り越えてきました」
奈々「同じ語尾を繰り返さない」  竹下「繰り返さない」
奈々「そうじゃない。お前のことだ」 竹下「お前のことだ」
奈々(指差して)「お前だ」  竹下「あっ!私のことですね」
次の指差し点検につながる
by イ・とうしろう (2012-01-10 21:41) 

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